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「カッコ悪いところ、見られたなー。医師を目指している者が自己管理が出来ないなんて…」
本当は好きな人の前で、醜態を晒したことが悔しい。
好き…?私が…?
身体がおかしい…
「陽子さん…目から出てますよ…」
「えっ?」
涼子に言われて、目元を触ると…かすかに濡れている。
これは…
気づくのが遅かった。暖かい手が私の頬に触れる。
「あまり無理しないで下さい。何かあったらお話聞きますから。」
優しい笑顔。
日本人離れした綺麗な顔が余計に綺麗に見える。
「年下のくせに生意気よ…」
「よく言われます。」
またニッコリと笑って、私の頭を優しく撫でる。私…涼子のことが…
喉まで言葉が出てきている。
体温がグングンとあがって、心臓がうるさい。
「……き……」
「えっ?陽子さん、何か言いました?」
声が震えて、まともに涼子の顔が見れない。
だけど…
「好きなの!貴女が好き」
子供っぽい告白、今の私には精一杯の告白。病室に私の声が響いたけど、周りを気遣う余裕がない。
涼子の反応が気になるけど、聞きたくない。沈黙が病室に続いた。
「……」
「……」
胃が壊れそうなくらい痛い。
こんなに緊張したのは初めて。
沈黙を破ったのは……
「陽子さん、ありがとうございます。人から好意を寄せてもらえるって素晴らしいことだと思います。しかし……」
聞きたくない。
その一言だけ頭を過ったが、言葉として出てこない。
涼子は言葉を続けた。
「私は今、別の人に好意を寄せています。だから、陽子さんとは……」
もう、駄目だ…。と思った瞬間、身体が勝手に起き上がり、その場を全速力で逃げた。
「陽子さん!!」
涼子の強くて大きな声を無視して走った。後先なんて考えられない。
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