15章

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「陽子さん、ありがとうございます。人から好意を寄せてもらえるって素晴らしいことだと思います。しかし……」 聞きたくない。 その一言だけ頭を過ったが、言葉として出てこない。 涼子は言葉を続けた。 「私は今、別の人に好意を寄せています。だから、陽子さんとは……」 もう、駄目だ…。と思った瞬間、身体が勝手に起き上がり、その場を全速力で逃げた。 「陽子さん!!」 涼子の強くて大きな声を無視して走った。後先なんて考えられない。 点滴を無理やり、引きちぎったため、腕が痛い。 荷物を病室に忘れて来たことに気づくのに時間がかかった。 「人生で初めての好きな人、告白…」 大きな独り言を呟いて、道を歩いている。どこに向かっているのか分からない。 自分を改めることが出来ると信じていた。 涼子のことを考えると、夜遊びの回数が減り、次第にしなくなった。 今まで以上に勉強やレポートに励んだ。 だけど… 「私って、カッコ悪い…うっ…」 目から涙が出てくる。 段々、大粒になっていき、道端に座り込んだ。 誰か…助けて… 心の中で叫んだ。 その瞬間、後ろから暖かいモノを感じた。 私は恐る恐る振り返ると、そこには…… 「はぁ…はぁ…陽子!貴女、何してるの!?」 長い黒髪、綺麗な白い肌、白シャツと黒いパンツが似合うスレンダー体型。 「椿ひめ……」 息を切らして、顔にはうっすらと汗をかいている。 座り込んでいた私を抱き締める体勢。 私は放心状態。 「とにかく、どこかのホテルに行きましょう。歩けないなら、担いでいくわよ」 椿姫は呼吸を整えて、立ち上がり、私に手を差し伸べる。 私はその手に自分の手を伸ばした。 ゆっくりと立ち上がり、椿姫に引っ張られながら、道を静かに歩いた。 差し伸べられた手が暖かい。 頭がうまく働かないまま、あるホテルに入り、客室のソファーに身を寄せた。 部屋に入るなり、椿姫は私の手を握りしめて沈黙状態。 「椿姫、なんであそこに居たの?」 私はとりあえず、頭に浮かんだ言葉を口に出してみた。 椿姫は浮かばない顔をして、軽いため息をついた。 視線を少しずらして、口を開く。 「涼子から連絡があったのよ。貴女、荷物を病院に忘れているから、連絡がとれないし、心配した……」 椿姫の言葉が止まった。
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