15章

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私は不思議になり、問いかけようとしたら、また抱き締められた。 「貴女、今泣いてるわよ…。」 耳元で椿姫の甘い声が響く。 泣いている? 自分でも気づかないくらい涙をコントロール出来ない。 「つばき……わたし…わたしねぇ…」 子供のように泣いている。 言葉がうまく出てこない。 椿姫は私の背中をゆっくりと擦った。子供をあやすように。 「無理に言わなくていいわ。大丈夫よ、大丈夫だから」 涼子とは違う落ち着いた声。 暖かい胸元、髪から放たれる良い香り、暖かい手。 「うっ…………」 私はただただ泣いた。 心の何が空っぽになった気分。 初めて、人のために自分を変えようとした。 人は簡単に変われない。 むしろ、変わらない。 私は……………… バチッ! 心の奥深くにあるモノが弾けた。暖かいモノではない、冷たくて黒いモノ。 椿姫の肩を両手で押さえて、少し距離をとった。私の行動に椿姫は、驚いた表情になり、顔を覗き込んでくる。 「本当に無理に……」 またもや、私は椿姫の言葉を遮った。中指を椿姫の唇に置いて、口角を少し挙げた。 「椿、人って簡単には変われないのね…涼子に振られても、今まで通りに接するわ。振られても気持ちまで、抑えろなんていう法律はないでしょ?」 自分でも驚くように淡々と話している。立ち上がり、ホテルの窓の方に移動する。 夜景の見ながら、椿姫にまた語りかける。 「貴女と私は一緒だよ。想いがあるのに相手に届かない。とても綺麗な感情だけど、残酷だよね。だからさ…椿。」 椿姫も窓の方に移動してきて、私の後ろに立っている。 振り返えて椿姫と向かい合わせになり、近づく。 そして、椿姫の首に自分の両腕を巻き付ける。 驚いた表情で私を見る椿姫。 「悪い冗談はよしなさい。話ならいくらでも聞くから離れ…」 「離れないわよ、椿姫。私達って似た者同士じゃない?相手へ想いが届かないところがね。寂しくない?」 私は椿姫の首筋に顔を埋めて話した。 黒く練っとりしたモノが私の心を覆っていく。
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