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「陽子、貴女が私に言ってくれたのよ。見守る大切さについて。貴女はそれを涼子に出来ないの?」
「涼子」というワードを出されると、身体中に緊張が走る。
涼子は悪くない…頭では分かっている。
「私はもう出来ない。入る隙間がないんだから、椿にはまだ出来るの。だけど…寂しいから椿姫を道連れにする」
「何を勝手に!」
「不安なんでしょ?相手が振り向いてくれるか。」
図星を言われたのか、椿姫の表情が暗くなって行くのが分かる。
「椿姫の辛い気持ちを理解できるのは、私だけよ。大丈夫よ…貴女が不安から解消されるまで側に居るから」
きっと、私の表情はとても皮肉たっぷりな顔をしている。
椿姫一人だけが前向きに行く事が許せない。
「陽子……」
私の名前を小さく呼んだ。
私は椿姫の頬に手を添えて、距離感をゼロにしていく。
「一緒に堕ちましょう。」
椿姫の唇を奪った。
返事なんかさせない、そういう権利も奪ってみせる。
堕ちるって、とても簡単なこと。
一人は絶対にイヤ。
私って、本当に卑怯者。
翌日、産まれたまま姿で椿姫が隣で寝ている。
シーツがグチャグチャになってることはあまり気にせず、椿姫の髪を触る。
「綺麗な黒髪…」
静かに笑って、バスローブを身にまとい、窓辺に座り込む。
青空を見ながら、少しだけ考えた。
「フフッ…これからが楽しみねぇ。」
全てはここから始まった。
椿と私の関係。
懐かしい思い出。
あれから6年。私はコーヒーを飲みながら、呟いた。
「そろそろ、タイムリミットかしらね。椿姫、貴女は試させてもらおうから。楽しみで仕方ない」
コーヒーカップを置き、携帯を取り出して電話をかけた。
口角を静かに挙げて、鼻歌交じりで教室を後にした。
願わくは、貴女の隣に…
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