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今、何時かしら?
マンションのカーテンの隙間から光が漏れている。
私はカーテンまで歩き、少し開けて目を細める。
「眩しい…」
ベッドの隣に置いてあるサイドテーブルの時計を見た。アナログ時計は「13時」を示していた。
ベッドに腰をかけて、まだ寝ている人間に手を伸ばした。
「この子、まだ寝てる…。若い子って本当によく暴れて寝るわね」
掛け布団からサラサラした茶髪、イケメンのような整った顔つき、少し焼けた肌。
サラサラした茶髪を優しく撫でた。
愛しい存在。
手に入らないと諦めかけていたのに…目の前にいる。
贅沢な夢。
キィー
ドアがゆっくりと開く音がした。
音がした方向に視線をやると、私の癒しがやってきた。
「ニャーニャー」
白くてフワフワの毛並み。短い手足がとても可愛らしい。
多分、私がこの世で愛しいと思うのは、「皐」と「猫のマリ」のみ。
マリを抱き寄せて、膝の上に乗せる。
今は白いシャツしか着てない為、直接マリの毛並みを感じる。
「本当に可愛いわね、マリ。私、マリ以外に皐という大きな猫を好きになってしまったわ。ヤキモチ妬かないでね」
私の声に反応するようにマリが鳴き声をあげる。
マリを膝から降ろして、再び布団の中に入った。
皐は静かに寝息を立てている。
私は後ろから抱きつき、大切な宝物のように抱き締める。
「はぁー…朝の貴女も可愛かったわ。あんなに拒まなくても良いのに…」
子供のように暖かい背中。
私より数㎝しか変わらない身長が小さく見える。
~数時間前~
私に引っ張られ、マンションにやってきた皐。
動揺しているのか辺りをチラチラと見ている。子供みたい…
荷物は大学に忘れたまま。
予備の部屋のカードキーがコートの内ポケットに入っていた為、助かった。
「さっきからどうしたのよ?落ち着きがないわよ」
ポケットからカードキーを取り出して、ドアを開ける。
ドアが開く音でさらに落ち着きがなくなる皐。視線を私と合わそうとしない。
『だってさ…あんなことの後にマンションなんて恥ずかしい過ぎる!椿は良いけど、私の気持ちは…』
精一杯の気持ちなんだろう。
確かに『告白→ヤった→さらに…』急な展開。
しかし、私の中では余裕がない。
私は皐の頭をハレモノを扱うように撫でた。少し安心したのか、やっと私と視線を合わせた。
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