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腕の中にいる皐が小さく暴れている。
分からないフリをして、皐に問いかける。
「安心=受け入れてる証拠でしょ?観念しなさい」
『うっ!なんか椿が大人気なくなる見える…』
「何とでも言いなさい。私は貴女を…」
この続く言葉を今言うわけいかない。
やるべきことが残っている。
彼女の感覚を忘れたくない。
余計に腕の力が強くなっていくのが分かる。
『椿…少しだけ痛い…』
蚊のような声で訴えてくる。
腕の力を緩めて、皐から少し離れてまた瞳を見つめる。
皐の顔はゆでダコのようになっていた。やり過ぎたかしら。
「もう痛くないでしょ?それよりベッドで少し寝なさ…」
最後まで言いかけた所で服の裾を掴む感覚が伝わった。私は再び視線を皐に戻すと、さらにゆでダコになっていた。
『もっ…と…』
「えっ?」
皐の声がさっきより小さくなって、きこえづらい。
聞き返すと、皐は顔を上げて勢いよく口を開けた。
『もう少しだけ…抱きしめて…』
大胆発言すぎる。
私の理性を試しているの?
精一杯、欲望と戦って皐に近づいてソッと腕をとって引き寄せた。
「他人にそんな発言したら許さないわよ。」
『何も言ってないから!』
自覚がないって大変。
だから、星の数だけの女の子達が泣くはずね。
腕の中にいる皐を優しく抱き締める。
暖かい…
私は常に願うわ。
貴女のずっとそばにいることを…
……………………
……………………
あれから何時間が経ったのだろう。
椿に抱きしめられて、あまりに暖かくて意識が途絶えた。
季節は夏に近いのに、暖かいという表現はおかしいのだろうが…
心が温かいという意味。椿に流されているような気がする。
そして、背中にぬくもりを感じる。
柔らかい何かが当たっているような…
うっすらと目を開けた。
腰に違和感を感じるので手探りすると、椿の白く長い腕が腰に絡まりついている 。
『そんなにしなくても逃げないのに…』
ため息をつきながら、ゆっくりと上体を起こした。まだ腰に椿の腕がまわっている。
小さく笑い、アナログ時計の音がしたので、そちらの方向を向いた。
時計は『15時』を指していて、カーテンの隙間から弱い日射しが漏れていた。
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