スワロー国へ。

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 神関港は扶桑国でも五本の指に数えられる大きな港である。 見る者に城壁を思わせずにはいられない立派な岸壁からは、国際航路を結ぶ大型客船が毎日のように発着していた。 「…三日後にはクロップスやな」 革製の大きなトランクをそっと傍らに置き、これから自分が乗る貨客船『真国丸(しんこくまる)』9000屯を見上げながら一蔵。 やがて一蔵の目は、舷側の前後に描かれている大きな緑十字標識を捉えた。 「緑十字か… どこぞのボケが、中立国の船誤爆し腐りよったせいやなホンマ」 顔を歪めながら一蔵。 それも無理のない話であろう。 なぜなら半年ほど前に公海上で起きた扶桑船籍の貨客船豊国丸誤爆事故で、一蔵の親友が行方不明になっているのだ。
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