スワロー国へ。

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 夜の帳の中を静々と進む貨客船真国丸。 両舷の前後に輝く緑十字は、国際条約で定められた緑十字船の証である。 闇夜の中でもはっきりと視認出来るよう、電飾が施されているのは言うまでもなかった。  緑十字船とは、軍需物資の運搬を固く禁じられている船舶の事であり、永世中立国の一国である扶桑国には本来縁がない筈の船であった。 全てはあの誤爆事件が原因なのだ。  豊国丸の一件は、扶桑国民そして政府はもちろん、海軍省を大いに刺激する結果となった。 血の気の多い海軍軍人の中には、国際航路を航行する船舶に駆逐艦の護衛をつける事を海軍軍令部に直談判した者も少なくはない。 豊国丸事件で行方不明になった十河一蔵の親友も、その中の一人なのである。 尚、もっと血の気の多い軍人になると、空母機動部隊を以てラルベリオン帝国と中央人民共和国に対し、直ちに報復攻撃を…と、とんでもない事を主張そして公言する者まで出る始末であった。
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