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ひとまず飯にしよう、という話になり、女がおずおずと手を挙げた。
「よろしければ…。」
その言葉と同時に二つのうち小さい方の鞄を開け、中から重箱を取り出した。
小さな鞄にはその重箱の他には水筒、三人分のコップが入っていた。
重箱一段が一人分の弁当になっていた。
わざわざ持参してくれたことに感謝しつつ、まだ温かみの残っているご飯を口にした。
弁当を平らげ、満腹感に眠気を感じてきた頃、女がぽつりと聞いた。
「あの……何故、北海道なのでしょう。」
その質問に対して、私は理由を聞いていたので、隣で寝ている男の変わりに答えてやった。
「どうもその土方さんってぇのが、北海道で亡くなったそうでなァ。土方さんが使っていた道具やら武具やらが在るんだとよ。」
すると途端に女の目が複雑な色を帯びた。
「北の方で亡くなったことは耳にしておりましたが、そうですか、北海道で…。」
哀愁を含みながらも、少し嬉しそうな、なんとも不可思議な表情であったので、私は頷くことしかできなかった。
ふと気付けば、辺りはもうそろそろ夕焼けの刻に入ろうとしていた。
朱く、突き抜けるような夕焼けに鴉の黒が映えていた。
私はその朱から目を背けられなかった。
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