序章

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私が祐之助が悔しさを露にした姿を見るのは、もしかしたら初めてかもしれなかった。 確かに明治になって暫くになるが、やはり旧幕府軍は敵扱いか、それ以下である。 比較的若者の衆は維新だ、ご一新だと盛り上げている。 世間的な目で見れば、今、新撰組の中枢であった土方を語る祐之助はキチガイとされるだろう。 だが祐之助自身は構わないという素振りである。 しかしそれでは祐之助の親戚一同が迷惑被るのだ。 ゆえに祐之助は何もできない。 しかも三男であるから、親の期待も薄く、人の繋がりは残念の言一つである。 「おれは佐藤の若旦那に聞いて初めて土方歳三を知っただけだがな。土方歳三という奴を、この世から消してはならんと思うぜ。」 女は黙ってうつむいて聞いていた。
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