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――私は今、夢を見ている。
何故だかはっきりとそう理解できた。
私を私と認識する意識のみが浮いており、周囲の景色をはじめ、軽い混乱を起こした。
いまだかつて、此れほど奇妙な夢を見たことがあっただろうか。
私は一人で立っている。
雪原の上に立っている。
見渡す限り灰白一色で、空と雪の色の違いが分からぬほどであった。
ぐるりと辺りを見回すも、枯木の一本すら見つからなかった。
雪が降る中、世界の終わりのような景色に私が独り、立っている。
いい加減目が白に慣れてきたところで、点々と続く足跡を見つけた。
疲れは感じないものの、ただ立っているだけというのも退屈であったので、私は足跡を辿ってみることにした。
どれほど経っただろうか。
足跡を辿るも終着点が見えず、ただ真っ直ぐに在り続けるそれに、自分が足踏みをしていただけだった錯覚に陥ってきた。
その間も周りの景色は変わらず殺風景で、果たしてこの空間から出られるのかなどと非日常な考えまで過った。
まるで歩くことが義務であるように、虚ろに頭を下げて歩き続けていると、足跡が無くなっている事に気がついた。
いつから無くなったのかは覚えていない。
ハッと後ろを振り向くと、自分の足跡までもが無くなっていた。
慌てて周囲を確認した私の目に入ってきたのは、その空間にはあまりにも似つかわしく無い、生気を感じさせる梅の木であった。
梅の木にはただ一つだけ、花がついていた。
私はそこで意識を手放した。
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