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「副会長。」
その声に振り向くと櫛知が分厚い紙の束を持って立っていた
いつもは腑抜けた彼の顔は少し強張っていて、すぐにここに呼び出した理由を聞いた
「碓氷綾の資料をまとめてきました。
彼らの偽造工作や揉み消された部分が多すぎて手間取りましたが。」
…この短時間でやってのけるとは対した男だ
「碓氷綾は例の組織の一員です…今回ではっきりとしました。」
「上手く刑を軽くしていたものだ、それが暴かれていればもっと厳重な牢に収容されていたというのに…。」
ふと、モニターに視線を移す
変わらず一点で光り続ける記号…神代正義はまだあの部屋に居るのか
のんきなものだ、そう思って櫛知に視線を戻すと彼は今まで以上に苦い顔をしていた
「碓氷綾が捕まった日に行方不明になった少年を知っていますか?」
「警官一家殺害事件のことか。」
碓氷綾が警官の家に忍び込み夫妻を殺した、その事件の後逃走の際に車で事故を起こした碓氷綾はあっけなく捕まってしまったのだ
10年前の事件だが、未だに解決出来ていない
何故なら夫妻の子供が忽然と姿を消してしまったから
子供を知っているかという問いに頷くと櫛知は続けた
「碓氷綾が捕まった日に町外れにある病院に男の子が運ばれてきたそうです。深い傷故に保険証など確認する暇も無く治療し、翌日には連れてきたものと姿を消していたそうです。」
「それが夫妻の子供だと?」
「碓氷綾は何だかの理由で子供を誘拐し、偶然起こった事故で怪我を負った子供を誰かに預けた。と考えます。」
…じゃあ今その子供は10年経った今は何処に
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