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ささやかな、波風。 あたし、杉本海里(スギモトカイリ)は、お気に入りの金色のネックレスをぶちりと取り、 足元の海水に、ぽちゃんと落とした。 汗で錆びちゃったから、捨てざるを得なかったの。 ぷかりぷかり、浮かぶネックレス。 屑を交えた砂と共に、波の流れに奪われていく。 今あたしがぼんやり浜辺に突っ立って直前まで付けてたネックレスを海にポイ捨てした訳。 その本当は、悲しみに身をまかせたかっただけかもしれない。 暗い感情の波線に委ねてみたかったのかもしれない。 どうだろ。 哀れな自分を海で癒させるために、あたしは海にいる。
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