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幼い背中にハンマーで殴られたような衝撃が走った。
少年は吹き飛び、地面に頭を強打して意識を失った。
二十秒足らずで少年は再び意識を取り戻したが、彼には何百年もの間眠っていたように感じられた。
身体の節々が痛んだ。特に頭痛がひどく、頭の中で鉄球が暴れまわっているような鈍痛を覚えた。温かい液体が垂れてきて目の中に入ってくる。少年は痛みに耐えながら右手を動かし、それを拭った。夜なのでよく見えないが、鉄の臭いからそれが血液だと判断できる。
立ち上がろうとしたが、身体が激痛に耐えかねてそれを拒絶し、まるで言うことを聞こうとしない。真冬の冷気を孕んだ地面が少年の小さな身体を凍えさせていく。
少年ははっとしたように顔を上げて首を動かした。そのときに首からごきごきと妙な音がしたが、彼はそんなことに構っていられなかった。
少年にとって大切な人が見当たらないことに気づいたのだ。
「ママぁ……」
濁点混じりの声を上げながら首を動かして母親を探す。口を開けたときにポロポロと歯が溢れ落ちた。口内は切れて鉄の味が広がっていた。
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