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翌朝、翌朝と言っても日は高々と登り、巷では「こんにちは」だとか「ハロー」なんかの挨拶が交わされるであろう時間に起きた俺は、炬燵机の上に書かれたダイイングメッセージの様なものを見ていた。
彼女の場合はダイイングと言うよりデッドな気がする。
木目をイメージした机に直接書かれたそれは狂気的で、何とも寝覚めの悪いものだった。
机に真っ赤なペンキで書かれていたのだ。御丁寧に垂れる字体で……。
「何がフラグ回収してきますだよ」
正確には、そんな丁寧な書き方では無かったのだが、内容的には相違ない。
九月なのに、夏の暑さがUターンならぬVターンならぬIターンで戻って来たような炎天下だった。
その上、やる気を無くさせるメッセージ付きだ。
……これはもう寝るしかあるまい。
俺は、扇風機の風量メモリを最大まで上げ、タオルケットを投げ出して枕に顔を埋めた。
「そう言えば、今日は夏祭りだよな」
枕に顔を埋めたまま、自分に言い聞かせるように独り言を呟く。どうかイイネ! を押してくれたまえ。
……どうでもいいね。
そして俺は、枕元に置いてある年代物の目覚まし時計に手を伸ばす。
「こいつ、どんな音が鳴るんだっけ……」
もう何年も目覚まし機能を使っていない為、もはや音が出るかすらも怪しい。鳴るかどうか確かめるのが無難なのだろうか……。
「まあ、鳴らなかったら鳴らなかっただな」
十七時にタイマーを設定し、さっさと夢の国に旅立った。
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