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俺は、背後からお面の視線を感じながらたこ焼きを買っていた。
「お前も食べるか? 一つだけならやらんこともないぞ」
俺が優しく言った側から、俺が口に運ぼうとしていたたこ焼きを見事にかっさらっていった。
「あふい!」
「当たり前だろ。焼きたてなんだから。と言うか、爪楊枝は二本あるんだから自分でつついて食べろよ」
「あたしはたこ焼きハンターなの。敢えて困難なものを狩ってこそよ」
メンチも吃驚だよ。
「ちなみに変化系能力者よ。必殺技はグルグルガム」
ヒソカもギランも吃驚だよ。
「よし! 次行ってみよーー!」
まあ、俺は大して目的がある訳じゃないし、礼子の行きたいところに付いていくか。
動きにくいはずの浴衣で、着崩すこと無く器用に跳び跳ねる幽霊を見ていると、少しだけ心が和む気がする。
空色の浴衣に夕焼けが綺麗に映えていた。
先程まで空は礼子の浴衣と同じ色をしていたはずなのに、いつの間にか時間が経ち、礼子を置いて色を変える。
橙色、それは目には淡く優しく。しかしその本当の波長と同じで、時間の移ろいを感じさせるには強い色であった。強すぎる色であった。
……こいつの時間は止まってしまっているんだよな。
「セッちゃん! まだまだいっぱい屋台あるんだから急がないと! 金魚は待ってはくれないのだよ! 戦いは常に、二手先三手先を読んで行うものだ」
そりゃ、連邦も苦労するはずだ。
「ああ、全部まわってやるか」
「おっ! セッちゃんもいつの間にかやる気だねぇ。何かいいことでもあったのかい?」
ああ、ちょっと優しくしてやっても良いかと思っただけだよ。忍野。
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