未知との夏祭り

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 屋台の人混みの前で子供のように目を輝かせる礼子は、本当に嬉しそうで、連れてきた甲斐があったと言うものだ。俺自身も、礼子を見ていて悪い気はしなかった。  無邪気にはしゃぐ幽霊をしばらく眺めているのも一興だったが、俺の目に、それ以上に輝くものが飛び込んできた。それは、俺が祭りに求めるメインイベントの一つであり、譲れないもの。それだけの為に祭りに足を運んでも良いと思えるほどだ。  そう。そのメインイベントと言うものは、白いあれである。人の頭より大きなビニール袋を被せられ、いくつか客引き用に陳列されたそれを目にしたときは今でも心踊る。  たった一本の頼りない割り箸に支えられた巨大な白は、体積に対して異様なほどに重さがなく、かと言って物足りなさと言うものは微塵も感じさせない。  原材料は至極単純にグラニュー糖だけなのだが、編まれていない絹糸のように空気を伴って形を保ったそれには夢がロマンが優しさが詰まっていた。  体積中で原材料を分析するなら、糖以外に夢とロマンと優しさが含まれているのだと断言できる。  そして、雲のように自由なのだ。  そう。俺は綿菓子が大好きなのである。初めての祭りに胸を踊らせている礼子を傍目に、俺は勝手に綿菓子を購入していた。 「おじさん、綿菓子一つ! 出来たてをお願い」 「あいよ!」  俺の注文に快く返事をしてくれたおじさんは、一般的なサイズより大きめな綿菓子を作ってくれた。  後で神の奴に、運を良くするように伝えといてやるよ。おじさんには近い内に何か良いことが起こるだろう。 「ん? 礼子?」  俺が目を離したらこれだ。……早速迷子になりやがった。 「おーい! 礼子!?」
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