未知との夏祭り

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「…………」 「…………」  俺とインコはしばらくの間睨み合った。……こっち見んな。 「こんな狭いところで、刀そんな風に握っちゃ駄目だよ」 「鳥が喋った! あたし、あいつ欲しい! 取って!!」  それにしても、懐かしい台詞を吐く鳥野郎じゃないか。……久々に燃えてきたぜ。 「何を背負う? 強さの果てに何を望む!? 弱き者よ!!」  無駄に良い声と綺麗な滑舌で喋るインコには若干恐怖を感じたりもした。しかし、全くもっていちいちムカつく鳥野郎である。  首根っこにわっかを引っ掻けて袋に詰めてやる。  俺は手首のスナップを最大限に生かしてポイをインコに向かって振りかぶった。風を切る音が金魚すくい屋台の中に響き渡る。 「生き急ぐな。若き力よ!」  半回転、体を一瞬にして翻したインコは、ポイを避けて飛び上がり。ポイの風圧によりミルククラウンのように跳ね上がった水面に再び着水した。その後、インコはドヤ顔でそう言ったのである。  しかし、そこで終わらないのがイレギュラーと言うものだ。そう礼子である。  彼女が俺の振り終わったポイを持つ手を握って方向転換させ、インコを弾き飛ばした。  弾き飛んだインコは、丁度俺のお椀の中に入り、いったい何が起こったのか分からないように口を開けていた。 「見事!」 「やられて威張るなインコ」  どこまでもよくしゃべるインコだった。それからインコは、俺の肩に乗って片方の羽だけを格好良く広げている。……ここまで中二病な鳥は初めて見た。 「我が名はダークフレイムマスター。闇の炎に抱かれて消えろ」  お前が消えろ、中二インコ。
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