未知との夏祭り

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「さっ! 帰ろっか」  花火が全て終わり、独特の硝煙臭が薄煙と共に降り注ぐ。  祭りの屋台はほとんどまわったし、十分満喫したと言えるだろう。  俺は一足先に塔から飛び降りようとすると礼子に両足を掴まれて盛大に転けた。 「っつ!! 何するんだよ」 「あたしも飛びたい」 「飛べば?」 「何その飛び降り自殺する人に、度胸を試すように煽る言葉は!」 「飛べば?」 「何その鍋パみたいな気軽な物言いは!」 「飛べば?」 「壊れたファービーかよ!」 「飛べば?」 「あい! きゃん! ふらい! いやっっふぁぅぅう!!」  あーあ。本当に飛びやがった。……仕方ないな、空中で拾ってやるか。 「セッちゃん酷い」  地上に降り立つや否や、幽霊はそんな事を呟く。 「そんなに気にするな。ちゃんと空中で捕まえたし、空も飛べただろ」 「君と出会った奇跡がこの胸に溢れてるよ」  そりゃ空も飛べるはずだよ。  それから帰り道は、これ見よがしに上空高くを飛んで礼子の後ろを付いていった。  普通なら何もない帰り道のはずだが、流石のイレギュラーちゃんは何故か犬に追われていた。  自慢の十一秒フラットも形無しの慌てっぷりだった。  慌てながらも犬に追い付かれないように逃げていることが素直に凄い。追っている犬は野生のボルゾイか……。手強そうだな。どんな犬か分からない人はレッツ・グーグル。 「はははっ! ここまでは追って来れまい! 愚民め、このぷっちょ愚民め! 我が魅力的なおしり様でも眺めてな!」  礼子は電信柱にしがみつきながら犬に吠えていた。どっちが弱い犬かは明らかだ。礼子だ。  一方、強い犬ことボルゾイの方はと言うと、大人しく牙を剥いてお座りをしていた。いつまでも待つつもりらしい。  あっ。礼子が掴まっていた電信柱の取っ手が折れた。そしてジリジリと落下を始めた。 「待て犬! 話せばわかる。あたしたちは人間だ! あたしを解き放て!」  犬からは、心なしか黙れ小僧と言う言葉が聞こえる。 「ヘイ! リッスン! サリアはハイラル城に何かあるって言ってたわ! 多分ペティグリー・チャムじゃないかしら」  犬からは、心なしかペティグリーよりキャットフードを寄越せと聞こえる。  それにしても、必死だが、無駄な台詞しか吐いていない。……真性のアホだ。
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