未知との夏祭り

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 結局のところ、俺が礼子を助ける羽目になるのだった。 「セッちゃんありがとう! ホントあたしの神だわ」 「リアル神だよ」  可愛い大家さんが住んでそうなボロアパートに着くと、第一声から感謝の言葉が述べられた。 「そうね。RGね」  そして第二声がこれだよ。リアルゲイみたいに言うな。 「あたし、明日の朝から一気にフラグ回収してくるから、今日は早く寝るね。三日後の夜、例の公園に来てくれる?」 「わざわざお別れでも言ってくれるのか? そりゃ嬉しいな」 「最後にセッちゃんを利用します。以上、おやすみ」  最後に礼子はそう言ってコタツムリになった。俺はあまり事情を深く聞こうとは思わなかった。  強い未練があるからこそ霊になったのだ。そんな奴がはぐらかそうとしている事。……此方から聞くべきではない。  実体のあるイレギュラーな幽霊として存在し、俺と出会い、未練を断つために行動を共にする……。巡り合わせと言うのは数奇な物だ。  俺自身が、殺生神になった経緯を思い出す。未練があり、実体がある幽霊……。懐かしいな。  礼子が望むなら、魂の初期化などせずに、俺の後輩になるって道もアリかもな。  普通の幽霊は無理だが、実体のある彼女なら……。  俺は、そんな有らぬ妄想をしながら眠りに着いた。目が覚めたときにはもう礼子は出て行っていないだろう。  次に会うのは三日後だ。
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