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その日の俺は、いつも通りネットゲームのレベル上げバイトをしていた。いつも通りの俺は、いつも通りじゃなかったあの日に想いを馳せる。
優子が生き返った日。礼子が成仏してしまった日。
俺は悪運強く、優子を生き返らせた事がバレること無く日常生活を送れている。
あの日あの時の礼子の台詞は忘れられない。
俺は優子を生き返らせた後、礼子と共に家まで送り届けた。
家に入ることを渋っていた優子だったが、礼子の励ましで顔色を変えて帰宅した。
俺と礼子は月明かりが眩しい夜中を、例の公園まで歩いて行った。少しだけ……話がしたかったんだ、礼子が成仏してしまうまでに。
「セッちゃん、本当に今までありがとう。感謝してもしきれないよ。やっぱり優しいよね。セッちゃんて」
苦しそうな鳴き声を上げるブランコに乗り、礼子は俺に大きな声で訴えた。
「俺は仕事だからな。お前みたいに死んでも友達を心配し続けて、嘘を貫き通していたヤツに比べれば優しさなんて無いようなもんだよ」
そう。礼子はずっと気付いていて黙っていたのだ。嘘をつき続けていたのだ。今考えても、よくもまああんなに口からでまかせが出たものだと思う。
「女は嘘をつくものよね。何百回も独り言を言うわけ無いじゃない」
出会った瞬間から嘘をついていたのだと言う。幽霊になった瞬間から、神のようなものが現れることを待っていたのだと言う。
「あたしがいなくなった後の優子が心配でたまらなくて成仏出来なかった。どうにかして人生をやり直させてあげられないかってずっと考えてた」
優子の死の瞬間も見ていたし、その後にどういう経緯でイレギュラーな幽霊になったのかも知っていた。
「セッちゃんが黒髪ロリータなエロ本買ってたのを見たの。それで、うほっ! あたしドストライクじゃん! って思って頑張っちゃった」
そうです。ずっと誤魔化してましたが、わたすがロリコンどす。
「セッちゃんにあたしを惚れさせて、優子を生き返らせてやろうって近付きました」
まんまとやられたわけです。でも後悔はしてない。こいつは……根っからの良いヤツだと知っているから。
「惚れさせようと思ったけど、よく考えてみればあたしって友達すら作れない残念なぼっちって気付いた」
おせーよ。誰が好き好んであんなバカテンションを好きになるよ。
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