■第1章 ちいさな殺し屋のちいさな世界

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5 同級生たちのうらの顔 輝季は、他のクラスの人の事情にもくわしかった。 誰々さんは、父親ほど年のはなれた男の人とつきあっているとか、誰々さんが退学したのは、ナンパされたとき、一度にたくさんの大学生をあいてにエッチをして妊娠(にんしん)したからだとか、誰々さんと誰々さんは、出会い系サイトで援交をしていることなど、わたしがぜんぜん知らなかったことをおしえてくれた。 それらのことは、わたしがまったく思いもしなかったことだったので、とてもおどろきだったし、それを知らなかった自分が、すこしとりのこされているような気にもなった。 「そんなことしてる人、うちの学校にもいたとは!」 「ウリしてる人、ほかにもけっこういるよ」 「えっ!?」 「私が知ってるかぎりでも、おなじ学年の中に、あと7人いる」 「そんなに!」 「バイトなんかするより、かんたんにお金がかせげるからね」 「信じられない……あぶないめにあうとかかんがえないのかな?」 「お金のみりょくのほうが大きいんでしょ。真香は、ほしゅてきなかんがえかただからね」 「それじゃ、輝季もしたことあるの?」 「ない。あんなの、ほかに能がない女のやることでしょ」 きっぱりと、そんな言葉がいえる輝季を、わたしはたのもしく思った。
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