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夜のコンビニというのは、どうしてか理屈抜きで引き寄せられてしまう。まるで、光にたかる羽虫のように。
「レイ、お前明日ガッコいくのか?」
「ん、そうだな。明日は行くよ」
こんな不毛な会話だって、俺たちはコンビニの駐車場の縁石に腰掛けながら交わしている。
「ふーん、俺はもうちょい様子見だな」
あのクラスは。慶次が、タバコに火を着けながらぼやいた。
「お前もいっとくか?」
箱から一本出ているものを勧めてくる。
「いらねえ」
「んだよ付き合い悪ぃな」
正直、あんな煙をわざわざ体内に入れるやつの気が知れない。その気が知れないやつが、今の俺の一番の親友なのだから、人はわからないものだ。
「へっ、いいこちゃんが」
顔にフーッと煙を吹きかけてくる。ひどく臭う煙が、俺を直撃した。
「早く帰らねえ? 俺眠いんだけど」
目の前に迫った煙を手で振り払いながら、俺は懇願する。もう一時間も経てば、日付が変わってしまうだろう。
「そうだな。お前は明日ガッコあるし、お開きにするか」
慶次は「よっこらせ」と年寄りの様な声を上げて立ち上がる。
「それ吸い終わってからでいいから早く行こうぜ」
本当は一秒でも早くこんな所から立ち去りたいのだけれど、そこは慶次に対する俺の気遣いだ。
「いや、もういいや。こんなシケモクくせぇの、吸ってらんねぇよ」
そう言って慶次はタバコを捨て、せっかくの俺の気遣いもろとも右足で踏みにじった。
「ほら、ヘル」
バイクの前に移動した慶次は、シートの中から取り出したもはや俺の専用になっているヘルメットを投げてくる。俺はそれをナイスキャッチ。
「十分で頼むぜ」
慶次との二ケツもすっかりお手のものだ。ヘルメットを被り俺はいつもの席に座り込む。
「五分ありゃあ着くよ」
慶次は俺が後ろに乗ったのを目で確認するとエンジンをかける。この騒がしいエンジン音だって、俺は好きじゃない。
「いくぞ?」
その一言で、バイクが走り出した。
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