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隼斗とは幼い時からずっと一緒だった。
幼稚園も小学校も、中学だって変わらない。
隼斗は整った顔立ちに持ち前の明るさと物腰の柔らかさでクラスの人気者だった。頭もいいし、嫌味がない。
当然女子からもモテるし、同性からも好かれている。
そんな自慢の幼馴染みは、一年ぶりに会うとなんだか大人っぽくなっていた。
背も伸びたし、声も低くなって、この間久しぶりに会ったときは彼があの隼斗なんだとはにわかに信じ難かった。
が、人をからかっては遊んで楽しむところは全く変わらないので、話してすぐに「あぁやっぱ隼斗だ」と安心のようなげんなりするような不思議な気分を味わった。
相変わらず身長の伸びない私の頭を肘置きにしたり顎を乗せるのはやめてくれないらしく、今は肘置きにされている。
「重いのですが…」
「チビな奏が悪い」
私の小さな抗議も一蹴されてしまう。不条理だ!
「ふっ奏、面白い」
「へ?」
「声に出てたよ。不条理だーって」
私と隼斗のやり取りをクスクスと楽しそうに笑う千夏がそう言ってまた笑う。
「えっ嘘恥ずかしっ!」
「不条理じゃねーよ。これは小さいお前の性だ」
「それが不条理だって言ってんのよー!」
「アハハ」
私たちを見て声を上げて笑う千夏に、小さい小さい連呼する隼斗。
そして肘置きにする失礼な隼斗の腕を払いのけようと奮闘する私。
「朝から元気だな」
そこへ、覇気のない眠そうな声がかけられた。
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