プロローグ

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ピーンポーン、と電子音と共に「いらっしゃいやせー」という気だるい店員の声。 店内には自分以外客がいないのか、レジにいる店員は暇そうにしている。 うわぁ、懐かしいなぁ。 ニ日前に日本に帰国した私は久しぶりの祖国のコンビニに感動していた。 やっぱりこう、日本語なのが嬉しい。 ずらりと並んだ商品を見て回りながら懐かしさに胸が弾んだ。 母親の味も涙が出るくらい嬉しいが、慣れ親しんだお菓子の味もなかなかに捨てがたい。 次々とお菓子を手にとってはにらめっこして、腕の中に収めていく。 片手で持ちきれなくなったので途中でカゴを持ってきた。 ほとんどお菓子で占領されたカゴを片手に、一番のお気に入りである商品を探した。 そう広くない店内なので、それはすぐに見つかったが 「あ、」 「……」 伸ばした手がぶつかった。 「スミマセン」 「いや、こちらこそ…」 慌てて手を引っ込め、頭を下げた。 ちら、と伺ってみると黒髪に顔が隠れた背の高い男の人だった。 黒のパーカーにだぼっとしたジーンズのその人は、私が狙っていたハバネロスナックを取るかと思いきや… 「え…」 隣にある、クリーム増量と大きく文字の書かれたチョコパイを取っていった。 しかも2つもだ。
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