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驚いて再び彼に視線を戻すとバチッと音がしたと思わせる程にガッチリ目が合った。
長い前髪の間から覗く黒い瞳が、無表情にこちらを見ている。
え、いや、なぜに?
困惑した私は気まずさに視線下にずらした。
すると、彼の腕にはチョコやらポッキーやら飴やら、とりあえず甘いお菓子が大量に…。
「アンタ…」
「えっ」
「これが目当て?」
唐突に話しかけられて間抜けな声がでる。
そして、目の前には先ほど手を伸ばしかけたハバネロスナックのお菓子。
一瞬目が点になった。
「違う?」
「あ、いえ、そうです」
私がハバネロを受けとると、彼はこちらを一瞥して、興味なさそうに首筋を指で掻いた。
「…じゃ」
と短く言葉を残してさっさとレジに向かう。
さっきまで暇そうに突っ立っていた店員が、これまた気だるそうにしながらも素早く商品をレジにかざす。
「ありがとうございやしたー」
私は、やけに間延びした声と電子音を背にに去っていく彼の後ろ姿を唖然と見ながら
(あれが噂の甘党男子?)
と少しずれた感想を抱いたのだった。
これが、私と彼の出逢い。
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