第一章

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神埼奏、16歳、辛党。 身長の低さがコンプレックスの、いたって普通の女子高校生。 「うわぁ…相変わらず無駄に大きな学校」 ここは私立美坂高等学校。 県内でもかなりの進学校であり、また部活動にも力を入れている創設三年目の新設校である。 校舎を見上げていた奏はしばらくそうしてから造りが無駄に厳かな校門をすり抜け、昇降口までの長い道を歩いた。途中にグラウンドや体育館、それからテニスコートなんかの施設を横目に (やっぱりいろいろ無駄だよなぁ) という感想が頭に浮かぶ。 私立美坂高校は綺麗で広い校舎と充実した設備が売りだが、流石に各部活用の体育館、野球場、各種格闘技場、グラウンド二つ、その他云々は力を入れすぎではないだろうか。他にもクラブ棟や文科系クラブ用の建物も充実し過ぎているのには驚きを通り越して呆れるばかりだ。 まぁ、そんな事を言いつつ自分もテニスコートの広さと設備の良さに惹かれた質なのだが。 「職員室には寄らなくていんだよね」 昨日の担任からの指示を思い出して確認。 「うん。教室待機っと」 新学期、日本で初めての高校生活に、奏は軽やかな足取りを更に弾ませたのだった。
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