第一章

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2‐Cと書かれたプレートを確認して、騒がしい教室の戸を開けた。 ガラガラ、と新しいはずなのに扉の音がやけに響いた気がしてドキリとする。 (試合より緊張する) 一瞬入るのを躊躇ったが、『奏はいつも通りにしてればいいよ』という幼馴染みの言葉を思い出した。 教室に足を踏み入れると何対かの目がこちらを見るのが分かる。 「あれ?うちにあんな子いたっけ?」 「さぁ?」 「もしかして海外研修生じゃない?」 「あぁ!!噂の!!」 (噂のって何ですか噂のって!!) クラスメイトの会話に思わず内心で突っ込みを入れてしまった。 落ち着けーと言い聞かせて、いつも通りいつも通りと意識する。 「おはよー!」 大きな声を出すと、自然と自分を取り戻せるもので、すっと緊張が抜けて上がっていた肩がいつもの撫で肩に戻った。 クラスメイトが驚いた様子でこちらを見ているが気にしない。 「おはよう」 黒板に貼ってある座席表を確認するべく歩き出すとほぼ同時に、後ろから声がした。 振り返ると、胸まである長い黒髪が綺麗な子。 「おはよう」 その子はもう一度同じ言葉を繰り返した。 思わず固まっていた私はっとして、 「お、おはよう!!」 えらく焦った。
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