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私の過剰反応にふふ、と上品に笑った彼女は、綾瀬千夏というらしい。
教室の廊下側前から二番目の席の子だ。
「私のことは千夏でいいよ」
「うん。よろしく千夏」
私も奏でいいよ、と返してふと日本での高校生活至上、初めてのきちんとした挨拶だということに気付く。
柔らかく笑う千夏に胸の中が温かくなった気がした。
「席近いね」
ふと、千夏が座席表を見てそう言った。
つられて視線をずらせば、苗字順で出席番号を振られているから当たり前だが、偶然にも千夏の斜め前だった。イコール一番前の席。
千夏と席が近いのは嬉しいが、前はなぁと…若干気落ちした。
「真面目に授業受けねーとな」
「あ、相川おはよう」
「おはよ」
突然後ろから聞き覚えのある声。
隣に立っていた千夏が片手を上げると、後ろの人物も軽い調子で手を上げた。
「で、お前はなに固まってんの?」
ひらひらと顔の前で大きな手のひらが揺れる。
私はずびしっとそれを払いのけた。
「別に固まってないし」
「朝置いてったのまだ怒ってんのか?」
「え、何二人とも知り合い?」
ニヤニヤしながら聞いてくる幼馴染み、相川隼斗をジト目で睨みつける。
ぽかん、とする千夏にやっぱり隼斗は軽い調子で
「あぁ俺ら幼馴染みなんだ。幼稚園からの腐れ縁」
と人の頭をペシペシ叩いた。
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