第一章

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私の過剰反応にふふ、と上品に笑った彼女は、綾瀬千夏というらしい。 教室の廊下側前から二番目の席の子だ。 「私のことは千夏でいいよ」 「うん。よろしく千夏」 私も奏でいいよ、と返してふと日本での高校生活至上、初めてのきちんとした挨拶だということに気付く。 柔らかく笑う千夏に胸の中が温かくなった気がした。 「席近いね」 ふと、千夏が座席表を見てそう言った。 つられて視線をずらせば、苗字順で出席番号を振られているから当たり前だが、偶然にも千夏の斜め前だった。イコール一番前の席。 千夏と席が近いのは嬉しいが、前はなぁと…若干気落ちした。 「真面目に授業受けねーとな」 「あ、相川おはよう」 「おはよ」 突然後ろから聞き覚えのある声。 隣に立っていた千夏が片手を上げると、後ろの人物も軽い調子で手を上げた。 「で、お前はなに固まってんの?」 ひらひらと顔の前で大きな手のひらが揺れる。 私はずびしっとそれを払いのけた。 「別に固まってないし」 「朝置いてったのまだ怒ってんのか?」 「え、何二人とも知り合い?」 ニヤニヤしながら聞いてくる幼馴染み、相川隼斗をジト目で睨みつける。 ぽかん、とする千夏にやっぱり隼斗は軽い調子で 「あぁ俺ら幼馴染みなんだ。幼稚園からの腐れ縁」 と人の頭をペシペシ叩いた。
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