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突然すずの声が聞こえて来て、ユーリは不思議な空間から抜け出した。
「ユーリ? ユーリ、どこ?」
どうやら見つけられないらしい。
とても不安そうな声。
きっと置いて行かれたと思っているのだろう。
面白いからしばらく放っておこう。
音を立てないようにキセルをしまい、ユーリは笑う。
素直な奴だ。
「ねぇ、ユーリ~」
声と足音が近付いて来て、離れていく。
涙が声に滲んで来て、そろそろ可哀相だと思った彼は静かにカーテンから出た。
すずは部屋の真ん中に着物姿で立ちすくんでいる。
「すず」
「うわぁっ!? へ……あ、ユーリ!」
「お前、探しもんすんのも下手だな」
その言葉にすずは顔を真っ赤にして、潤んでいる目を袖で抑えた。
「ほんとに、不安になったし……」
「お前みたいなガキ、置いてかねぇよ。ほら、さっさと支度しろ。行くぞ?」
すずはギュウッと唇を噛み、着物を掴み、少しの間黙り込んでから再び彼を見上げた。
「……髪、結んで?」
「はいはい、お嬢様」
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