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すずの元気な返事にユーリは頬を緩め、忘れ物がないか確認して部屋を出た。
案外市民は指名手配犯に興味がないらしい。
もともと金持ちだからか、犯罪に関心がないのか。
誰もすずが鈴蘭と言う少女だということに気付かない。
助かるが。
「イー地区、イー地区」
すずはスキップしながらユーリと手を繋ぎ、一緒に歩く。
ユーリは始めキセルを出そうとしたが、彼女が跳ねているせいで止めた。
「もう少し落ち着け。目立つだろ」
「え~……だってもうすぐだし……」
「はしゃぐのは確実にママの情報見つけてからにしろよ。E地区にあると決まった訳じゃねぇんだからよ」
むぅ、とすずはむくれて、大人しくなる。
湿った風が気持ち悪い。
「雨降りそうだね。すず、雨って見たことない」
「ほんっと世間知らずだよな。雨も知らねぇのかよ……」
「知らないよ? ほんとのほんとに、お外出たの初めてだし」
ユーリは何故か素直に納得して、大人しくなったすずを連れて歩く。
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