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少し変な臭いのする通りを歩き、とてつもなく細い路地から出ると田園風景が広がっていた。
「うわぁ、すご~い。ここ、イー地区?」
すずの言葉にユーリは頷く。
更に湿った空気が二人を包む。
「…………」
ユーリは少し辺りを見つめてから、ゆっくりと歩き出す。
足場の悪い道を行き、広大な緑の絨毯に入る。
初め田畑に見えたその緑の絨毯は、丈の短い人工の草だった。
「これ、本物じゃないね。なんでこんなの、こんなにいっぱい植えてあるの?」
「本物じゃなくても光合成はしてるからな。この辺りは工場が多いから、汚れた空気にはちょうど良いんだよ」
「ふぅん……」
こうごうせい、の意味が分からなかったすずは彼に聞こうと思ったが、普段より表情が暗いのを見てやめた。
また今度聞こうっと。
長いこと歩いて行くと、とてつもなく大きな家が見えて来た。
D地区の家の優に三倍以上の敷地だ。
「すご~……。あれ、ユーリのお家?」
「違う。あれは今の地主の家だ。菊の両親が住んでる」
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