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寄って良いか、と聞かれてすずは頷く。
菊が亡くなった報告をするのだろうか。
近付けば近付くほど、その巨大さに驚く。
ある意味要塞だ。
ユーリは左腕を袖に通し、一息ついてチャイムを鳴らした。
すずには、少し離れてろと言った。
「はい、なんの御用……あら、睡蓮ちゃん。久しぶりねぇ」
「久しぶり……」
出たのは、今はやつれて老けているもののとても優しい雰囲気を持った女性だった。
ユーリの叔母だ。
「いつぶりかしら。少しゆっくりして行く?」
「いや、迷惑になるから良い。……叔母さんに一つ、言いたいことがあって」
「? あぁ、菊のこと? いつもありがとうねぇ。でも、もう諦めてるから……。ね? そうなんでしょう?」
痛々しい笑顔で叔母は言い、ユーリは俯く。
そんな彼に叔母はただただ優しく言う。
「睡蓮ちゃんが傍にいてくれただけで、あの子幸せだったと思うわよ。あなたのおかげで、手紙のやり取りだって出来たんだから。……ありがとうね」
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