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ユーリは俯き、地面に転がっている箱三つを拾って見下ろした。
中はなんだろうか。
叔母が血相を変えて悲鳴を上げていたが。
と、家の中からヤマンバとその夫の声が聞こえて来て意識を集中させる。
「また伊良の御曹司か? 全く、何度追い払えば気が済むってんだ」
「ほんとにねぇ。また人相が変わってたよ。気持ち悪いったらありゃしない。昔のまんまの坊ちゃんなら、まだ受け入れてあげるけどねぇ」
「馬鹿言え。あいつは元々あんなんだろ。優秀なのはお兄様だけだって」
「そうねぇ」
そして二人の高笑いが聞こえた。
そこで、もう止めた。
聞きたくない。
ユーリはぐっと拳を固めて深く息を吸い、ため息のようにそれを吐き出してすずの元へ向かった。
彼女は大木の影で一人待っている。
「あ、ユーリ。大丈夫?」
「ばーか、こっちの台詞だ。濡れてないか?」
「うん。この木が雨宿りさせてくれてるし!」
太陽のように明るい声と笑顔。
ユーリも微笑んで、彼女の頭を撫でてやった。
どうやら声は聞こえていなかったらしい。
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