蝶は花を求めて

110/184

8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
透明の屋根のおかげで、傘を差していなくても全く濡れない。 とても楽だ。 「ねぇ。すず、あれ食べたい」 「? ああ、良いな。買うか?」 「うん!」 すずが指差したのは肉まんだった。 今日は真夏だと言うのにひどく冷える。 そのせいか売れ行きが好調だ。 「んじゃ、二つな」 「うん。ありがとう」 すずを置いて二つ買い、袋に入れてもらう。 それを持って宿を探す。 何軒も宿が建ち並んでいる。 泊まるのに苦労はしなさそうだ。 「安いとこで良いよな」 「うん。すず、お風呂があれば良いし」 「ああ、風呂な……」 ユーリは頷き、個室風呂完備の宿を探す。 それもすぐに見つかり、部屋を取った。 「なんかお金持ちみたいだね。毎日いろんなところにお泊りするの」 「……全部オレの金だけどな」 呆れながら言って、ユーリは一番に浴室に向かう。 ドライヤーを見つけるとそれを手にして戻る。 「ほらすず。ゴム外せ。髪濡れてんだろ」
/184ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加