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「え~、良いよぉ。早くこれ食べたいし」
「ダメだ」
強く言われて、すずは渋々髪を解いてユーリの前に座った。
ユーリはそんな彼女の髪を乾かしてやる。
しっとりと湿っている。
「……冷めちゃうよ?」
「冷めたってモノは同じだろ」
「む~!」
プンプンと腕を振って、すずは口を尖らせた。
ユーリはあまり時間を掛けずに彼女の髪を乾かし、終わると一息ついた。
「はい、終わり」
「わ~い!」
解放されたすずは嬉しそうにして、机に置いた袋から肉まんを取り出す。
まだ温かい。
彼女は真ん丸のそれを、小動物を見つめるように見下ろしてからカプリと歯を立てた。
途端肉汁が出て来て、その感覚と美味しさにまた笑顔になる。
「おいし~! これも赤いヒラヒラだったね。自然って凄いなぁ」
「ヒラヒラじゃなくて暖簾な」
「良いじゃん、通じてるし。ほんとに美味しい! ユーリも早く食べなよ」
言われたが、ユーリは首を振ってけだるそうに右手を上げた。
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