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すずはそれを食べて、ユーリは窓から外を見た。
まだ雨は降っている。
しとしとと、悲しい雨だ。
「…………」
小さく窓を開けて、その隙間に煙を吐く。
湿った風が髪を揺らして部屋の中に勝手に流れていく。
「……なぁ、すず」
「ん~?」
頬をハムスターのように膨らませてすずは顔を上げ、ユーリに目をやる。
今の彼は、どこか寂しそうだ。
「なに?」
「オレ、ちょっと行きたいとこあるんだわ。一人で留守番できるか?」
「えっ!? ヤダよ。一緒に行く!」
肉まんを勢いよく机に置いて、すずは言った。
ユーリはキセルを持っていない方の手をひらひらさせて更に言う。
「ついて来たってつまんねぇよ。まだ雨降ってるし」
「良いよ。すず、一人ヤダし。もし警察来ちゃったらどうすんの?」
「……そん時はそん時だ」
ユーリは立ち上がって窓を閉め、キセルの処理をして脱いだばかりの着物を羽織った。
あっという間に湿っている。
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