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「ねぇ、やだよ。意地悪! すずも行くからね!」
ぴょこんと立ち上がって、すずは帯を締めているユーリの側に行く。
彼は彼女を見下ろしたあとため息をついて、わかったよ、と呟いた。
「あれは? もう食わねぇの?」
「ん、食べるよ? だから、ちょっとだけ待ってて!」
肉まんを指しながら言ったユーリにそう返事をして、すずは急いで食べてしまう。
お腹いっぱいだ。
ユーリは部屋の鍵を持ち、先に廊下に出ている。
すずはパタパタとそれを追いかけ、一言謝ってから歩き出した彼と一緒に階段を降りた。
「おや、お出かけですかい?」
「ああ、ちょっとな。なぁ、傘あるか?」
「ええ、ありますよ。そこの傘立てから好きなのをお選び下せぇ。お気をつけて」
主人の言葉にユーリは手を上げ、彼が示した傘立てに向かう。
大人用が三本、子供用が一本刺さっている。
ユーリは黒くて地味なものを選び、すずは大人用を使おうとしてやっぱりやめ、赤い子供用の傘を手に取った。
そして宿を出る。
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