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路地は薄暗く、湿っている。
カビ臭い。
奥に進めば進むほど暗さは増し、そして声が大きくなる。
ずいぶんと入り組んだ道だ。
迷子にでもなったのだろうか。
(いや、違うな)
次の角を曲がれば声の発生源。
青年は気配を殺し、様子を伺う。
「だから、帰らないって言ってるでしょ! パパは嘘つきだし!」
「しかし、お帰りにならないとお父様も心配致しますし……」
「ヤダヤダ! 絶対イヤ! せっかくお外出たのに。帰ったらまた一人ぼっちにするんでしょ!?」
会話だけだとなんの話かまったく分からない。
(良いとこのお嬢様が虐待されてる……ってとこか?)
青年はそう考え、そういうことは本人達に任せた方が良いと考えてこの場から去ろうとした。
しかし、次に聞こえて来た言葉と殺気にその考えを打ち消した。
「では、一度死んでもらうしかありませんね。お父様も、納得して下さるでしょう」
「ひっ!」
このままだとヤバイ。
青年はそう判断して相手が何人だか分からないまま角を曲がった。
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