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繁華街の中なだけあって、歩いている人は多い。
二人で手を繋いで、歩いていく。
しばらく無言で歩き、次第に人が少なくなっていく。
建物の数も減り、透明の屋根が途切れてしまうと雨粒が体に当たるようになってくる。
濡れないように傘をさして、寂しい道を進んで行く。
「ねぇ、どこ行くの?」
「どこだと思う?」
あまりにも重々しい空気に嫌気がさしたすずは、手を放して隣を歩いているユーリを見上げて言う。
彼は表情を変えないまま質問を質問で返した。
すずは困って、考え込む。
「ん~、ユーリのお家?」
「半分正解」
ユーリはそう言って、優しい目ですずを見下ろした。
赤い傘がよく似合っている。
結っていない髪が、可愛らしい。
「髪、結んでやってねぇな」
「あ、そうだね。大丈夫だよ。人、あんまりいないし」
ユーリがすずの言葉に頷くと、再び無言の世界。
店も人もない、二人だけの空間。
だがふと寂れた花屋が一件見えてきて、ユーリはそこに吸い込まれるように足を向けた。
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