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「良いよ。すず、平気だし。……誰のお墓なの?」
「これの、これ」
その質問にユーリは墓標の正面と、側面を指差した。
正面には『伊良家之墓』と書かれ、側面には伊良なんちゃらという文字列がいくつも並んでいた。
「えっと……」
「伊良家。オレの苗字。元E地区の地主家なんだよ。だからこんなに墓が馬鹿デケェの」
ユーリは笑って、自分も側面を覗き込み、軽く指で触れる。
その部分はいくつもの名前が何段にも渡って掘られている一番下の段だ。
男の名・女の名が二つずつ交互に並んで、赤い字を挟んでまた男・女。
「ねぇ、赤い字ってなんなの? みんな白い字なのに……」
「赤はまだ死んでねぇやつ。スゲェだろ。オレの名前白なんだぜ?」
言われてすずはもう一度字を読む。
クロユリなんてどこにも書いてない。
「ないじゃん、嘘つき。そもそもユーリ、生きてるのに白なわけないじゃん」
ぷくう、と頬を膨らませながらすずが言うと、ユーリは一度首を傾げてから苦笑した。
「ああ、悪ぃ悪ぃ。オレの本名、言ってなかったんだよな。これだよ」
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