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呆れるようにため息混じりにそう言って、ユーリはすずに目をやった。
「最後の親は、三年前に原因不明の大火事で家が全焼して……その時に死んじまった。あの人工の田畑は全部、オレん家の敷地だった場所だ」
言われてすずは田園風景を思い出す。
現地主の家よりも更に広かった。
ユーリの家の金持ち度合いが明らかに他と掛け離れていたということに気付いて、すずは唖然とする。
「す、すご……」
「だろ?」
へっと笑って、ユーリはもう一度墓の側面を覗き、自分の名の隣にある字を見つめた。
「……オレがまだ生きてること知ってるのは、叔父さん叔母さんと、今の地主だけだ。地主の野郎はオレが指名手配されてるってこと知らねぇから、助かるが……」
バレたら即刻警察に売られるだろう。
何故か彼等は、断絶した伊良家を目の敵にしている。
特にユーリは、その中でも嫌われている。
自分はもちろん、両親も彼等に憎まれるようなことはしていなかったはずなのだが。
「…………」
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