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と、彼は悔しそうに言って、そしてまた苦笑した。
「後悔したって、もうなにもかも遅いけどな」
「ユーリ……」
雨音がうるさく耳に響く。蒸し暑さが鬱陶しい。
悲しみが更に雨雲を呼ぶ。
ユーリとすずはお互いそれ以上言えることが無く、黙っていた。
だがふと、ユーリが何かに気付き、自分の字の下を着物が汚れるのを気にせずに拭う。
「? どしたの?」
「なんか、数字が書いてある気がして……」
ユーリが拭い終えると、すずが屈みながらそこを見つめる。
書いてあったのは、『E-424855』。
その小さい字にユーリは目を見開き、バッと顔を上げた。
「なあ、すず。ママの情報の紙、今持ってるか?」
「え? あるけど……」
何故今出さなくてはならないのか分からないすずは戸惑いながらも頷く。
傘を持ってるから取り出しづらいが、それを上手く肩に引っ掛けて袂に手を突っ込んだ。
ユーリはその間、ひめゆりの文字の下を擦っていた。
「はい、これ」
「ああ、サンキュ」
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