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すずから紙を受けとったユーリは、それとひめゆりの下の文字を交互に見つめ、考え込む。
すずは彼が黙り込んでしまったためになんだかムッとして、ユーリを押し退けるようにして墓の側面を覗き込んだ。
ユーリが見つめるひめゆりの名前の下には、『E-424856』の文字。
「あれ? ママとおんなじ数字。なんで? ……もしかして、ユーリの妹がすずのママ?」
「んな訳ねぇだろ。姫が死んだの十四の時だぜ? 今生きてたとしても二十二だ。お前みてぇなデカイガキいねぇよ」
「じゃあなんで? ママとおんなじ……」
ユーリはジッと数字を見つめて考え込み、紙をすずに返すと盛大なため息をついて立ち上がった。
また動悸と眩暈がする。
「……悪ぃな、姫。騒がしちまって。また近いうち来るからな」
「え? もう帰るの?」
「ああ。雨も強くなってきたしな。さっさと行こうぜ」
ユーリは早口にそう言うと、さっさと歩き始めてしまった。
すずは慌てて紙をしまい、彼の後を追う。
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