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ユーリはなに言ってんだ、コイツ。と思ったが、尋常ではない怖がり方に一つ息をついて、震えているすずの頭を撫でた。
「わかったよ。こっち戻って来た日には、必ず来るとこなんだが……。そんな風に泣かれたらどうしようもねぇ」
「…………」
すずはカタカタと体を震わせながら、ユーリの足に顔を埋めた。
彼女は本当に泣いていた。
ユーリはすずが落とした赤い傘を拾い、来た道を戻る。
すずはずっと彼の足にくっついたままだ。
そのまま無言で宿まで帰った。
傘を返して部屋に入る。
すずは畳の上でうずくまり、眉根を寄せていた。
「大丈夫か?」
「うん……。なんか、ゴメン」
「気にすんな。飯食って風呂入って寝りゃ元に戻んだろ」
ユーリがキセルをくわえながら言うと、すずは小さく頷いた。
もう夕方だ。
雨は更に強くなって、強い音が部屋に響いている。
と、閃光が走って雷鳴が轟いた。
すずはビクリと体を跳ねさせて、ユーリを見上げる。
「雷か。珍しいな」
「かみなり? なにか爆発したの?」
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