蝶は花を求めて

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ああ、雷も初めてか、と思いながらユーリはふっと笑った。 「ある意味な。空が爆発してる」 冗談で言った言葉にすずは本気で怖がってしまい、立ち上がってユーリの側に向かう。 まだキセルがついたままなのに近付いて来るなんて珍しい。 「どした?」 「……すず、雷怖い」 「はぁ? お前もう八つだろ? なにガキみてぇなこと言ってんだよ」 呆れてキセルをくわえ、煙を吐く。 しかしすずは嫌な顔一つせず、今にも泣きそうな顔のまま小さく言った。 「すず、子供だし。怖いものは怖いし……」 「…………」 その言葉にユーリがため息をつこうとした時、また雷が鳴った。 すずは反射的に悲鳴を上げて跳びはね、ユーリに抱き着いた。 「ウワッ!? 馬鹿、下手したら火傷するぜ?」 「だってぇ……だって……」 くっついて来たすずに困惑しながら、ユーリはキセルの火を消した。 そしてチラッと外に目をやってから彼女の頭を撫でてやる。 「オレはどうすりゃ良いんだ?」
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