蝶は花を求めて

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シャツ越しに感じる髪の毛がくすぐったい。 「そんなふうに思わないよ。すず、ユーリの妹が羨ましいし。そんなに大事にされたら、嬉しいよ」 「そうか?」 「うん。すずは、誰にも大事にされないから……」 きゅっと、更にユーリに抱き着いてすずは小さく言う。 「パパは? 優しかったんじゃないのか?」 「優しいけど、怖い。なんか、時々睨んで来るし。すず、なんにも悪いことしてないのに。……だから、パパは好きだけど嫌い」 寂しそうな声音で言って、すずはユーリの胸に顔を埋めた。 華奢に見える彼の体。 でも筋肉質で、しっかりしている。 「ねぇ、ユーリ。もしパパがすずを見つけて、すずを捕まえて……殺そうとしたら、ユーリはすずを守ってくれる?」 「っ!?」 ドクン、と心臓が波打った。 雷の閃光が部屋中を照らし、なにか分からない漠然とした大きな恐怖に震えるすずの顔が目に映る。 「……ユーリ?」 ユーリは胸の痛みに堪えられず、思わず体を起こして手を当てる。 心臓が暴れている。 冷や汗が止まらない。
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