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「はいはい。じゃ、キリの良いとこまで家出の旅に付き合ってやるよ」
することねぇし、と言って、ユーリはすずの頭を撫でてやった。
自分を大事にしてくれる、全く他人のユーリ。
その言葉がとても嬉しくて、すずはぎゅうっと彼にくっついた。
「エヘヘ、ありがとう!」
「お前、ほんと喜怒哀楽の使い方上手いよな……」
メソメソしたかと思えばニコニコして、プンプンしたかと思えばしょんぼりして。
誰かさんにそっくりだ。
呆れながらユーリが言うと、すずは可愛らしい笑い声を立てて目を閉じた。
「明日、ママの数字のことについてお話しようね?」
「ああ」
ユーリは頷き、すずはそのまま寝息を立てた。
すぅすぅと小さい音。
ひめゆりと寝る時も、いつもこんな感じだったな。
ユーリは自分の左半身に感じる温もりに少し悲しくなる。
蒸し暑さはもう気にならない。
久し振りにひめゆりが傍にいてくれている気がして、切ない。
(……でも、なんですずの母親と姫の遺伝子番号が同じなんだ?)
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