8人が本棚に入れています
本棚に追加
/184ページ
「見た目のワリに弱ぇ……」
右の拳を緩く振りながら倒れた男達を見下ろし、青年は言った。
まじまじと彼等の服装、特に衿元に目をやった彼は突然蒼白して顔を歪める。
「やっべぇ……こいつらエージェントじゃん。また追われる理由増えちまうな……」
そう呟き、それから少女に目を向けた。
腰を抜かしているのか、ペタンと座り込んでいる。
「で、なんであんたはエージェントなんかに襲われてたんだ?」
「ぇ!? あ……えっと……」
突然声を掛けられて少女はビクリと体を震わせ、キョロキョロと辺りを見渡す。
「お前に言ってんだよ。早く答えろ」
少女の前にいわゆるヤンキー座りをして青年は更に言う。
少女は人相の悪い男に見下ろされて、泣きそうになりながら口をぱくぱくさせる。
「……パパとか言ってたな。どこにいんだ?」
「…………」
その言葉に少女は黙り込む。
青年から視線を外して俯いてしまった。
「……じゃあママは?」
「……いない」
ようやく答えてくれたが、意味のない答えだ。
最初のコメントを投稿しよう!