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暗闇の中一人で考え込む。
墓に小さく刻まれた数字の正体は、遺伝子番号。
世の中に一つしかない数字だ。
親子でも双子でも、同じ数字を持つ人間は存在しない。
最近は遺伝子番号を表に出すのは危険だとして表記されなくなった。
その為自分の番号を知る者は少ない。
ユーリも知らなかった。
唯一未だに表記されているのは、数年前に墓に入った者に対する物だけだ。
墓標に刻まれた番号。
それも一応隠すように上から塗料が重ねられていた。
(……遺伝子番号が同じ。そういやコイツの番号もママと同じとか言ってたよな……)
同じ遺伝子番号を持つ為には、一つだけ条件がある。
(……クローン。いや、でもありえねぇ。人間のクローンはまだ完成してねぇ。しかも八年前となれば……)
昔の記憶を頼りに可能性を否定する。
ユーリはため息をついて、暗い天井を見上げた。
雷はもう遠くに行ってしまったようで、光も音も届かない。
なにがなんだか分からないことだらけだ。
考えるのが嫌になったユーリはそのまま目を閉じ、僅かに続いている動悸を無視して眠りについた。
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